作曲家別アニメサントラ紹介-07

<最初に>
 今回取り上げたものは、あまりにきれいな旋律で、BGMとしても使えるのではないか、
と思えるようなものが多いと思います。
 むしろ、この手のサントラというものが、本来のサウンドトラックというものに近いような気がします。
 ところがこういうサントラは、印象的なメインテーマのような曲がないために、
それほど評価する人たちが少ないのも、また事実としてあります。
(2000.7.16 情報追加しました)

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第35回 星勝さん
(初出:99/11/17)

 70年代にニューミュージックなどの楽曲のアレンジャーとして
活躍した方ですが、このおもひでぽろぽろというアニメ映画作品の
持っている気分としっくりマッチした曲を提供していたのではないか、
という印象を持っています。
 なぜか、というとこの作品自体、70年代を土台として現代を
表現している作品だったから、だと私は認識しています。

 サウンドトラックの方(おもひでぽろぽろ オリジナル・サウンド・トラック
TKCA-30331 徳間ジャパンコミュニケーションズ)の収録曲の半分以上が、
70年代の歌や東欧の民族音楽が占め、星さんの曲はあまりでてきません。

 このため、イメージアルバムの方(おもひでぽろぽろ イメージ・アルバム
TKCA-30188 徳間ジャパンコミュニケーションズ)が、むしろ彼らしい曲を
きちんと聞くのに都合がいいかと思います。

 ストリングス(ヴァイオリンやヴィオラなどの弦楽器を指す)が伸びやかに
響き、シンセのキーボードやピアノがやさしく語りかけるといった曲調は、
どこかで聞き覚えのあるような…と思ったら、
Viola:村山達哉(第19回 ああっ女神さまっ 音楽編て事は 愉快だね などで紹介)
Kerb :松浦晃久(第32回 らんま1/2最強音楽編 で紹介)
という方々が、参加していたりします。

 70年代の気分をいっぱい含んだ、そのころを知る人には懐かしいような
旋律がたくさんつまった曲が、その多くを占めています。
 どこかで似たような曲があるような、と思うような曲ですが、
よく聞いてみるとこのアルバムにしかない曲であることに、気づかされる
はずです。それは、アレンジは似ていても曲の主旋律自体は星さんの曲だからです。

 ピアノやストリングスだけの曲(紅花・心の旅・紅花摘み)のように、
旋律だけで聞かせる曲は、メインテーマとなる旋律が幾度となく聞こえてきて、
そのやさしい気分に浸れるのではないか、と思います。
 

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第36回 松尾早人さん
(初出:99/12/24)

 ゲーム音楽では、かなり評価が高いようですが、私としては、
あまり評価できるものはないような印象です。すぎやまこういち さんの
門下生ともいえる方であり、作品世界にあわせるという意味での
音楽としては確かにいいのですが、汎用性のある他の作品の場面にも
使えるという意味では、やはり力不足という感じがしました。
 その流れに沿っている印象のある「魔法騎士レイアース」は、
曲としてはいいのでしょうけど、汎用性という意味ではいまいちという感じでした。

 と、いうことで、今回紹介するサントラは、その後つくられたアニメ番組のもの。

 怪盗セイント・テール オリジナル・サウンドトラック1 (POCX-1013)
 怪盗セイント・テール オリジナル・サウンドトラック2 (POCX-1034)
           (いずれも ポリグラム)

 このサントラも、ご多分にもれず1作目のサントラの方が、
よく使われます。

 メインテーマをはじめとする、品のいい感じのスタンダードな劇伴曲は、
作りがいいだけにあまり印象に残らない感じです。しかし、心情描写や
追跡する場面などの曲では、ゲームなどのような同じ曲調を重ねていくかたちに
こだわっていないためか、曲調という歌曲の表情がいろいろと変化に富んでいて
結構使える感じの曲に仕上がっています。

 オーケストラよりも、シンセを使った打ち込み系の曲の方が、何となく
いい感じの曲を作っているようです。

 まだ、時折「週刊 こどもニュース」(NHK総合 土 18:10)あたりで使っていることがあるような…。

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第37回 岩崎文紀さん
(初出:00/01/11)

 この方は、やはり曲自体があまり印象に残らない感じです。
 その理由は、ひとつひとつの曲がひとつの曲調にしっかりと
押さえ込まれていて、妙なひねくれ方をすることもなく
最初から最後まで流れてしまうから、だと思うんです。

 これまで紹介した中では、岩代太郎さんあたりに近い感じでしょうか。
 それよりも、タッチの音楽を担当した芹澤廣明さんに近いと行った方が、
いいのではないかな。

 紹介するサントラは、
 

 逮捕しちゃうぞ オリジナルサウンドトラック T (VICL-838)
 逮捕しちゃうぞ オリジナルサウンドトラック U (VICL-840)
 逮捕しちゃうぞ オリジナルサウンドトラック V (VICL-60067)

     (いずれも ビクターエンタテインメント)

 逮捕しちゃうぞ は、OVAで大谷幸さんがしっかりとしたサントラを
つくっていますから、それにプラスするかたちの音楽ということに
なったからだと思うのですが、どうも岩崎さんの曲は場面にはあうけど、
印象には残りにくい曲になっています。

 ただ、そんな感じの曲を作れる人は案外少なく、そのため他の映像に
当てはめてもそれほど違和感を感じることなく、すんなりと使うことが
できるようです。

 この手の方は、アイキャッチやブリッジといった短い曲では、その汎用性が
生かされるためか、かなりよく使われるような曲を作る場合が多いようです。
また、他の番組で使われる曲のほとんどが、該当する曲の一部を使うパターンで、
1曲フルで使われる例はあまりないようです。

 あんまりほめてないような感じですが、本来のサウンドトラックというのは、
そんなに曲が目立ってはいけないので、これが標準的なサウンドトラックをいう
感じだと思っていただくと、いいのではないでしょうか。

 最近の岩崎さんの作品だと、結構1つの曲の中でも複数の曲調が合わさった
感じの曲が多くなっていますね。
 以下に、その例になるサントラを紹介しておきます。
 

魔術師オーフェンRevenge オリジナル・サウンドトラック Part1
         (EPCE-5042 zentima)

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第38回 根岸貴之さん
(初出:00/01/18)

 昨年2月にも紹介していますから、何となくどのサントラが紹介されるか
予想がつく人がいるのでしょうけど、その通りのものが紹介されます。
(本当なら昨年8月あたりに紹介してそうな気がしたのですが…)
  前回の紹介は、第11回

 今回紹介するのは、

 カードキャプターさくら オリジナル・サウンドトラック3(VICL-60385)
 劇場版カードキャプターさくら オリジナル・サウンドトラック(VICL-60446)

      (いずれも ビクターエンタテインメント)

 サウンドトラックの2弾がかなりいろんな場面での曲を収録したこともあり、
3弾は緊張感のあるバトルでの曲が多くを占めています。
 そのため、アルバムとしてまとめて聞くときっついなぁ、という印象は
ありますが、曲そのものの質はきちんと保っているなぁ、という感じです。

 ほとんどが第2シリーズ(1999年6月までにNHK BS2で放映した分)のための
曲ですが、第3シリーズ(俗に「さくらカード編」と呼ぶらしい)で
メインテーマとして使われる曲がTrack17に登場しています。
 サントラ第4弾は、この曲を中心に他の曲が構成されるはずで、2000年1月
放送分から、それらの新たな曲が番組内にも登場しています。

 このような長編のアニメシリーズになると、どうしても複数の作曲家で
音楽を構成する例が多いのですが、それをしない点でも、特筆すべき
アニメ作品ではないでしょうか。

 劇場版の方は、ある一つの作品としてつくるため、たいがいの場合
TVシリーズで使われることはないものです。この劇場版サントラも、
TVアニメの方では使われていません。このため、ふつうは他の作曲家に
依頼することもあるのですが、作品世界の統一ということもあったり
するのか、根岸さんが担当しています。

 劇場版の方は、作品世界の持つほのぼのとしたものを保ちつつ、
場面カットにあわせた曲が並んでいた、確かに劇場版らしく「豪華に」
つくられていました。

 曲はいいけど、個人的には「でもTV番組で使われることは、難しい
のでは」と高をくくっていたら、まとめて何曲も使っている番組に
でくわして、頭をまた抱えてしまったのであります。
 劇場版のTrack25が、間違っても競馬関係の番組で使われないことを、
密かに祈っている私だったりするのでした。

(劇場版は NHK BS-2 8月8日に放送済み)

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第39回 村瀬恭久さん 鈴木豪さん
(初出:00/02/13)

 今回は、サントラアルバムとしてはひとつなので
 村瀬恭久さんと鈴木豪さんのお二人での紹介とします。

 作品は、第1弾を川井憲次さんがつくられた「姫ちゃんのリボン」の
もう一つのアルバム。(そちらの紹介は 第17回 を参照のこと)
 

 姫ちゃんのリボン 音楽篇U (ビクターエンタテインメント VICL-408)

 村瀬恭久さんは、シンセサイザーでの曲がもともと多い方のようですが、
この中ではしっくりこないということで、曲の半数が生楽器を使った
曲になったということです。そういうふうに変更した曲の方が、何となく
手がかかっているだけあって好印象を持っている感じがします。
 涼やかな雰囲気というのでしょうか。透明感のある空気のような
ものの中に、心情を表現するような曲に仕上がっていて、たまに
落ち着きたいときに聞くにはもってこいの感じです。

 得意技ともいえるシンセサイザーによる打ち込み系の曲は、躍動感のある
ギャグっぽい場面で使える曲で、サントラとしての曲の層のふくらみを
つくりだしているような印象です。

 鈴木豪さんは、かなり好みとする曲のジャンルが広い分、どこかで
聞いた気がするけどオリジナリティーのある、編曲としてのおもしろさが
感じられる曲を提供しています。
 引き出しが多い分、場面の表情を演出するような曲がその多くを占めます。
(しっかり遊んでいる曲もあるし)

 クラシックぽく聞こえるような曲がいくつかあり、そつがないというのか
絶対ジャケットが浮かばない曲だよなぁ、と思うくらいきれいな旋律を
つくりだしていたりします。SMAPが歌っていたオープニング・エンディング
ソングのインストゥルメンタルも、これがなかなかいいんですね。オリジナルの
曲とはかなりちがうイメージに仕上がっていますが、これが不思議と違和感が
ないというのは、「うまい」の一言です。

 ちなみに、このサントラではお二人の曲が交互に入っているのですが、
一気に聞いてもたぶんその違いは分からないはずです。
 インデックスをみてはじめて分かるくらい、このサントラ自体の
コンセプトがしっかりしているということを気づかされるのでした。
(おかげで、たまにこれらの曲が聞こえてくることがあります)

 こんなふうに、アニメーション作品を制作する側がきちんとした
音楽に対するイメージを作曲する側に発注しないと、結果として
作品全体のイメージがでてこないということのようです。
 そういったイメージがはっきりしないサントラは、やはり作品を
見たことがある人だけにしか聞かれることなく、他のTV番組で
耳にすることもないようです。

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第40回 朝倉紀行さん
(初出:00/02/27)

 今回は、朝倉紀行さん。

紹介するサントラは、

るろうに剣心 オリジナル・サウンドトラック
                (ESCB 1727 EPICソニー)

るろうに剣心 オリジナル・サウンドトラックU -DEPATURE-
                (SRCL 3674 ソニーレコード)

るろうに剣心 オリジナル・サウンドトラックV  -京都決戦-
                (SRCL 3794 ソニーレコード)

オリジナル・サウンドトラック未収録曲
 るろうに剣心 ディレクターズ・コレクション
        (SRCL 3999 ソニーレコード)

るろうに剣心 オリジナル・サウンドトラックW  -Let It Burn-
                (SRCL 4178 ソニーレコード)

 この方は、アニメ音楽はるろうに剣心のみといっていいようですが、
この作品初期の音楽は何となくしっくりこなかったですね。
 まず、キャラクターの設定に合わせた音楽を中心に「つくらされた」という
感じをどうしても受けてしまって、ストーリーの下地としての音楽の関連が
どうもぎくしゃくしていたような印象がありました。
 アニメーションとしてはかなり新規性のある舞台設定ということで、
どうもそのとっかかりを他のアニメ同様キャラクターに求めたから
だったのではないか、とあとから思うのでした。

 しかし、時代劇的要素=和的な楽器中心ではなく、今 日本でつくられる
音楽に則(のっと)ってつくられていて、しっかりした音楽の世界感を
演出しているのは、さすがという感じです。

 音楽がしっくりくるようになったのは、朝倉さんがサウンドトラックUで
述べている「ストーリーとドラマ性」に曲作りのテーマが動いた頃から。
 作品自体も志々雄真実の登場する京都編へと移行するあたりで、
この頃に原作をあまり知らずにこのアニメにはまった人も多かったのでは、
と思うくらい、映像・ストーリー・音楽がうまくできていたのではないでしょうか。

 旋律・リズム・使用する楽器、いずれもこの頃の曲は本当の意味で
新規性があったように感じます。基本となる世界感を崩さず、音楽で
これから行われるであろう事柄の背景の描写がしっかりできていると
いう点では、さすがというしかないですね。
 ただ危機感を煽(あお)るだけの曲なら、一定のリズムで
音階少しずつ変化したりや楽器を少しずつ複数増やす手法があるのですが、
そういうスタンダートなもの以外でも、しっかり危機感を煽る曲がある点は、
評価すべきでしょう。
 この手法は、モダンジャズでは結構早くから使われていた感じですが、
なかなかドキュメンタリー番組の音楽以外ではつくられてこなかったようです。
(この辺の解釈は、たぶん異論があるかと思います)

 この頃から登場したキャラクターに合わせた曲も当然あるのですが、
最初の頃に受けたような輪郭はしっかりしているがピンぼけといった
印象はなくなっていました。

 京都編が終わるとともに、るろうに剣心の音楽世界はどうも完成した
感じのようで、新たな曲もいくつか作られましたが、どうも私としては
しっくりこなかった感じでした。

 ただ、それでも音楽としての質は最初から最後まで高かったように
感じました。

蛇足にはなりますが
 同じソニーピクチャーズが同時期に制作していた「はれときどきぶた」の
音楽(前に紹介した増田俊郎さん 第8回 を参照のこと)を、るろうに剣心の
京都編が終わり東京へ戻るときの話の中で、1話まるまんま使っていた
ということがありました。私は、ストーリーも含めて楽しめました。
 逆にいうと、それだけギャグっぽい音楽がるろうに剣心では
少なかったということをあらためて感じたのであります。

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第41回 長谷川智樹さん
(初出:00/03/12)

 今回は、長谷川智樹さん。

 この方は、1990年代中盤に結構アニメの音楽を担当されて
いたようですが、結果として今でも耳にするサントラは
「みかん絵日記」だけだったような感じです。
 

 みかん絵日記イメージアルバム みかん音楽日記
      (APCM-5009 アポロン(→バンダイミュージック→会社解散))

 少女マンガのアニメ化作品で、日常生活を舞台とした作品の多くで、
その作品世界の音楽がかなり使われるといったある種の「定説」の
ご多分にもれず、この作品もその通りになった感じです。

 ネコがしゃべるという非日常以外は、ほとんど日常の中で繰り広げられる
いろいろなお話に添える音楽は、その場面を印象づけるようなものと
メインテーマにテンポやアレンジをかえてある種の流れをつくるものの
2通りに分けられるようです。

 メインテーマのアレンジは他のサントラと比較して結構豊富にあって、
なかなか楽しませてくれます。
 よく使われる方の曲は、このパターンのものが多く、たぶん気に
かからないくらい、いろんな場面になじんで使われているようです。
 なぜかというと、たぶんネコが主人公のストーリーですから、その
ネコのペースにあわせた気まぐれな感じがうまく表現されている
からなんでしょうか。あまり自分自身もその辺の解釈に自信はありません。

 場面を印象づけるような曲は、逆に悲しみなどの感情を表すために
使われていたためか、他のアニメサントラの曲とそれほど差異が
みられないためか、あまり使われているようではありません。

 それにしてもいつも思うことは、作曲者別といいつつ、その音楽を
発注するアニメーション制作側の作品コンセプトがしっかりしているか
どうかによって、音楽としての当たりはずれがかなり決まっているような
感じがしますね。
 この方も、他にいくつかアニメ音楽を担当していますが、そちらの方は
私としてはあまりひっかからなかったですし、他のTV番組などで
使用されることも、また、なかったんですね。

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今のところ17シリーズまで

作曲家別アニメサントラ紹介

こんなものも作っております

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