<最初に>
商業用の音楽と芸術性のある音楽をつくる際にどうしても分けて考える人が
いるようです。でも、考えてみれば今は芸術性のある音楽とされるものも、
その多くは発表当時は「流行の音楽」だったものが多いと思えるんです。
特に、サントラのように映像にあわせるのを前提とする音楽は、
映像にあわせるという意味でどうしても他の音楽より多少引いたものが
あると思ってつくっている人もいるのかもしれません。
でも、結局どんな形でも人々の記憶に残る音楽というのは、
発表されることが前提であり、その場所にはあまり左右されないと
私は思うのですが。
そんなサントラを、私は選んでいるつもりであります。
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かつて、中国ネタのBGMといえば「らんま1/2」をいうことが
かなり長い間続きましたが、現在はどうも「はれときどきぶた」の方が
多いような感じがします。
それくらい、よく聞いた人もいるとは思いますが、案外気づかれて
いないのが、今回紹介する「らんま1/2」のサントラだったりします。
ずいぶん前に紹介した森英治さんのらんま1/2のサントラとは
かなり趣(おもむき)が変わって、良くも悪くも現在の「川井憲次的音楽」の
原型をつくっているような曲がたくさん収録されている感じであります。
そうそう。今回紹介するサントラは、
らんま1/2 熱闘音楽編 (PCCG-00013 ポニーキャニオン)
この一連のサントラの珍しい点といえば、メインテーマとなるような
曲がないということでしょう。しいていうと、おちゃらけた曲と、落ち着いた
感じの曲、格闘場面の曲、のように体系的に曲調が決まっているという
ふうにいえると思います。
今でも使われているといってもいいくらい定番のサントラ、といってもいい
くらい使用頻度が高いようで、今でも時折聞こえてくるのは、この体系的な
曲調がたくさんあることに起因するのかもしれません。
つい元のアニメ作品を知っているために使われていると笑ってしまうのが、
Track15とかTrack17の曲。なぜかこれらの曲は日本の美しい風景の紹介の
BGMとして使われることが多いようで…。
シンセサイザーなどによる打ち込み系の音楽に作り方は近いはずなのに、
それを感じさせないというところも、彼の特徴といえるのではないか、
と思います。
ついでに、
らんま1/2 中国寝崑崙大決戦!掟破りの激闘篇!!音楽編
(PCCG-00156 ポニーキャニオン)
これは、劇場版のオープニング(Track1)などが、かつては
TX 日曜スペシャルなどの中国料理を中心にした番組のオープニングに
使われていたようです。でも、その曲の最後の部分だけは絶対使われなかった
なぁ。(その理由は、実際に聞いてみると分かりますが)
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1999年10月改編のアニメでの音楽担当がやたらと多かったのが、
この佐橋さん。
気づいただけでも、
鋼鉄天使くるみ(wowow火19:15頃 99.10-00.4)
ビックオー(wowow水19:00 99.10-00.1)
HUNTER×HUNTER(CX土18:30(放送時間異なる局多い) 99.10-)
風まかせ月影蘭(wowow水19:00 00.1-00.4)
と、まあたくさんつくっています。
個人的にひっかかったのは、この2つ。
ハンター×ハンター オリジナル・サウンド・トラック VOL.1
(MJCG-80018 Marvelous)
風まかせ月影蘭 オリジナルサウンド傑作選
(VICL-60535 ビクターエンタテインメント)
ハンター×ハンターは、これまでの佐橋さんの曲調というより、
むしろ彼がやりたかった音楽性のものという印象を受けました。
民族音楽的な要素を中心として、リズミカルに旋律が流れていく
というのは、作品そのものが持つものとかなり共通項があるようです。
明らかにある場面を特定した曲というものはほとんどなく、それぞれの
曲がダブりながら使うことだって可能というのは、佐橋さんがこれまで
つくったサントラに多くあるメインテーマを中心にまとめていくというものと、
ずいぶん異なっています。逆に、そのことが汎用性のある曲をたくさん
生み出すことになったようです。
風まかせ月影蘭は、逆に佐橋さんらしいといえばらしい音楽ですが、
なにせ時代劇ですから、しっかり型にはまった曲もあったりします。
ただし、不必要におちゃらけた感じにせず、しめるところは
しめている感じの曲もあって、なかなか聴き応えがあるかな…
と思ったらしっかりおちゃらけていたりします。
メインテーマをうまくアレンジしていき、場面にあった曲調に
変えていっている部分は、さすがという感じであります。
よく考えてみると、時代劇のサウンドトラックというのは、
案外少ないような感じがします。そういう意味では、他のTV番組で
結構使われる可能性があるのかな?
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はれときどきぶた で、過去にワタナベシンイチ監督作品の
音楽を担当し、中国ものといえば「らんま」から「はれぶた」への
見事な移行を成し遂げた(?)くらい、妙なインパクトのある
曲を提供しています。
今回紹介する「エクセルサーガ」でも、このコンビで音楽を
つくったんだから、しっかりギャグっぽい音楽になってしまいました。
そもそも、曲の題名自体
そりゃぁもう、元気だけなら資金もかかりませんしぃ…。
とか
軍隊ものがほしいっていうから…。
などというのふうに書いているし、
挙げ句の果て、BOUNUS TRACKS 1として
ウェザーなにがし
とか
ズター・ウォーズ
などというタイトルがあるくらいですからねぇ…。
そうそう。今回紹介するサントラは、
エクセルサーガ 大いなるサウンドトラック 実験@ (VICL-60512)
エクセルサーガ 大いなるサウンドトラック 実験A (VICL-60514)
原作通りにつくらないというし、「へっぽこ実験アニメーション」と
銘打っているくらいですから、まっとうな曲ですらそう聞こえてこない
という状態になってしまいます。
露骨にパクっていて、その微妙な(編曲の)感じの曲はさすがという
ものがあります。それっぽく聞こえても、ちゃんとはずすところははずして
いますからねぇ。
メインテーマの曲がないサントラですので、それっぽい曲というか
○○調といった曲を増田さんのイメージでうまいこと構築していったという
意味では、増田さんの色がはっきり出たサントラとなっています。
たぶん、作品を見ていなければまっとうなサントラなんでしょうけど、
なにぶんへっぽこと銘打ったアニメ作品のサントラですから、購入者の
かなりの部分は、笑いつつ聞いていることでしょう。
ちなみに、TVCMでは、
オリジナリティあふれる珠玉の名曲集!
まったく新しい斬新なメロディーライン
誰も考えつかなかった迫力のサウンド!
アニメBGMの常識をくつがえす大胆な試み!
と、テロップを入れていましたが、作品を見ている人はきっと
ギャグにしか見ていないんだろうなぁ。
個人的には、あながち間違っていない部分もありますけど、
サントラとしては結構常識的な線におさまっているような気がします。
(ただし、日本のアニメサントラとしては、という前提はつきますが)
それはそうと、結構このサントラが他の番組で早速使われていたのには、
納得するもののなんだかなぁ…、という感じです。
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第45回 冨田恵一さん 武藤星児さん
安部純さん
(初出:00/05/15)
そういえば、取り上げるのをすっかり忘れていたような
感じのサントラがありました。
紹介するサントラは
こどものおもちゃ サウンドトラック(SRCL 3628)
こどものおもちゃ サウンドトラックVol.2(SRCL 3760)
こどものおもちゃ サウンドトラックVol.3(SRCL 4145)
(いずれも ソニーレコード)
今あらためてこの「こどものおもちゃ」というアニメの第1話を
みると、それほど一気に(演出として)走っていったという感じは
感じられませんが、4年ほど前だととんでもない早いリズムで
ストーリーが進行しているという感じを受けましたね。
その一助となっているのに音楽があるのですが、監督の大地丙太郎氏の
「ラテンで行こう」というご本人もあまり要領を得ていない説明から、
この音楽ができているというんだから、何が功を奏するかわかったものでは
ありませんね。
リズミカルな弾む主人公の紗南を代表した音楽と、ひょうひょうとした場面を
演出する音楽が、絶妙なバランスで登場していくという点からか、
最初のサウンドトラックは予想以上に他の番組でも登場するようになっていました。
派手に目立つ紗南の行動をメインとした曲の他にも、落ち込んでしまったり
した曲などもあり、そのきちんとした起伏のある曲たちがうまいこと作品世界を
演出していったことのようです。
1年目のシリーズの後半になり、紗南の心理描写が中心になっていくと、
これまでのような曲では表現できなくなり、新たな曲を作ることとなったのが
Vol.2にあたります。ラテンとかサンバ調の勢いのある曲を変調した
落ち着いた感じのアレンジの曲がその多くを占めてしまうためでしょうか、
あまり他の番組で使われる率が多くないものとなってしまっています。
ただし、作品の表現を行うために、オリジナルのアレンジというものは
重要であることを認識させるサントラではあります。
ここまでは、作・編曲家としては冨田恵一さんのみの成果。
2年目に突入してしまい、新たなテーマが加わるため、音楽も当然
新たな形で作る必要なことになりました。そこで、作品の挿入歌で
参加していた武藤星児さんと安部純さんが加わった形で音楽が
つくられることとなりました。
このサントラVol.3は、編曲家・サウンドプロデューサー 武藤星児さんの
色がかなり濃くでてきている音楽となっています。
冨田さんの音楽も、ずいぶんアレンジが変わって、リズム感を強調した
感じのものへと変化したものとなります。
Vol.1や2と違った感じがでているのは、このアルバムの後半の方。
新たなキャラである主人公の友達となる風花(ふうか)の
イメージとなる曲(Track12 KENNEMA-DE FU-KA)とか、作品中で
映画 水の館の撮影の場面で使われる曲(Track16 HARMONY OF WATER)は、
劇中で使われる音楽としてはかなり聴き応えのある曲ではないでしょうか。
これらの曲は、画面さえうまくあっていれば、かなり効果的に
演出できるのではないかと思いますね。
このためVol.3は、一時期かなりの頻度で他の番組で使われていた
ようですし、今でも時折それらの曲たちが聞こえてきたりします。
こどものおもちゃという作品は、取り扱っているテーマや演出方法の
特異でかつ秀逸な点の他にも、音楽としてもラテンとかをさらにアレンジすると
いった点が本来評価されてしかるべきだと、私は思うのですが。
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この人を登場させたら、最近のデジモンアドベンチャーの音楽でも
語るという風に考える人が、少なからずいるかもしれませんが、
個人的にはあまり音楽として面白みがないので、たぶん取り上げません。
取り上げるのは
「きんぎょ注意報!」BGM集 (COCC-7244 日本コロンビア)
以前にエクセルサーガのタイトルのふざけ方を書きましたが、
それより前に、こんなタイトルをつけているサントラがあったんですね。
BGMその1 今日も元気に「はよ〜ん!」ああ、青春って素晴らしい。
BGMその2 う〜ん平和だなあ…と思いきや、やっぱり事件は起きるのだった。
以下 その10 まで延々とこの調子のタイトルです。
ギャグものの少女マンガを原作とした作品ですが、それ以上に
ギャグ満載のアニメだったような…。
そのおかげというのか、音楽も楽しいのなんの。
今でもどこかのTV番組のBGMとしておなじみだったりする
可能性の大きい音楽ばかり。
子供向けということで、リズムラインはほとんど凝ることはなく、
結構はっきりとゆったりとした調子の曲ばかりですが、シンプルな
いかにもの感じだけにおわせる恐怖と、あとはドタバタと
あわただしい場面を説明するような曲がそのほとんどを占めます。
これほど、輪郭がはっきりした曲だけに、むしろちょっとした
場面説明には有効な曲なんだろうなぁ…という印象を受けました。
ご多分にもれず、きっちりとパクった感じの曲もあり、
今の有澤さんの曲は凝りすぎなんじゃないの?と思えること。
今、あらためて聞いてみると「これもそうだったのか」と
いう曲がたくさんあって、まじめに楽しんで聴けますね。
ところが、このサントラ。残念ながら私は購入していなかったり
するんですね。その頃は、まだCDを月何枚も買えるほどの
余裕がなかったのもあるんですが、旬を過ぎるととたんにこの手の
CDは店頭から姿を消すというのもその買いそびれた理由だったり
するんです。
第47回 坂本龍一さん 野見祐二さん
(初出:00/06/11)
今回は坂本龍一さんと野見祐二さん。
取り上げるサントラは
オネアミスの翼−王立宇宙軍− オリジナル・サウンド・トラック
(MIDI MDCL-1247)
実際は窪田晴男さん・上野耕路さんもこのサントラに楽曲をつくって
いますが、アルバムとしてはプロデューサーとしての坂本氏の
色が濃いので、上記のような取り上げ方になっています。
窪田氏も上野氏も、つくろうとしている楽曲のイメージを表現できる
方として選ばれている感じです。そういう意味では、いい仕事はしていると
いう印象ですか、彼らのオリジナリティーがある仕事とはちょっといいにくい
感じです。
坂本龍一さんのその後のサウンドトラックとしての仕事を見ると、
やはりこのサントラが「習作」として存在しているなぁ、という印象を
うけます。
戦場のメリークリスマスというクラシックを主体とした楽曲を
構築し、まったく異世界を舞台とした音楽をこのオネアミスの翼では
打ち込み系(シンセサイザーなどを中心としてつくられた音楽)を
基本として、必要に応じてクラシック系の音楽をあてがうという
自在さが、このサントラにはあるようです。
その後のラストエンペラーでは、このサントラで試したことを
うまく使って、場面を効果的に演出していく良質の楽曲を提供して
いったようです。
アニメサントラのこれまでありがちだった「メインテーマを中心とした
楽曲」というものから、「場面毎にそれぞれ異なる楽曲」で一つの世界感を
作り出すということを明確に提示し、アルバムとしても楽しめるサントラという
ものを創りだしたという印象が、私には強くあります。
この辺が、プロデューサー坂本龍一さんの実力という感じです。
このサントラの中で、いくつかの曲が坂本氏の曲というより
編曲者の曲という印象をするのがあって、よく見てみると
野見祐二さんの名前があったりするんですね。
野見さんは、まだこの頃は坂本氏について楽曲をつくっている
という段階だそうです。その後の「耳をすませば」に通じる
仕事ぶりが、ここでものぞかせているようです。
それはともかく、この頃の坂本龍一氏のアルバムをつくっていたメンバーで
つくったサントラですから、たぶんジャケットさえみせなければ
1987年頃のアルバムという感想を持つのではないでしょうか。
サントラらしくないサントラのハシリのようなサントラという印象です。
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今回は、久石譲さん。
今回は、サウンドトラックより前にアルバムとして楽曲がつくられている
珍しい例について。
1992.2.12発売で、久石譲さんがMy Lost Cityというアルバムを
発表しています。
ピアノとストリングス(弦楽器)を中心にした曲で、都会の中で
漂流する(格好いい)男の生きざまという感じが漂っている
雰囲気の曲でした。
バンドネオンというタンゴでは欠かせない楽器にも、その奏者も
含めてかなりこだわりを持ってつくられたという経緯が、
彼の著書「I am 遙かなる音楽の道へ」(メディアファクトリー)に
書かれていますが、その辺が感じられる、本当に小気味よく聴かせてくれる
アルバムです。
このアルバムをつくっているときに、宮崎駿さんから依頼されたのが、
あの「紅の豚」の音楽です。ちょうど同じ時代を描いており、かつ、
主題もそっくりといっていい内容だっただけに、このアルバムを元に
結果としてイメージアルバム・サウンドトラックがつくられたような
形になってしまったようです。
それにしても、双方ともに同じような時代を描いた作品をつくろうと
していたことを気づかなかったということですから、これまた運命的という
感じでありますかね。
この作品がでた当時も(中年としての)「格好良さ」がなんとなく
感じられましたが、今あらためて聴くと、より一層その格好良さが
分かってきたような気がしますね。
そうそう。サントラの方は、
イメージアルバム 紅の豚 (TKCA-30577)
サウンドトラック 紅の豚 (TKCA-30596)
いずれも 徳間ジャパンコミュニケーションズ
サントラの方は、空を飛ぶという部分がでてくるため、
アルバムよりも飛翔感がある明るい感じの曲調になっています。
かつては全国ネットで放送されていたラジオ番組
「バックグラウンドミュージック」でも聴いているような
心地よさと、格好良さがそろったような曲たち、といっても
分かる人少ないだろうなぁ…。
まあ、紅の豚自体メジャーな映画ですから、たいがいの方が
その曲をお聴きであると思いますので、あまり細かい説明は
不要かもしれませんが。
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こんなものも作っております
2012 TV アニメ サントラ選
2011 TV アニメ サントラ選
2010 TV アニメ サントラ選
2009 TV アニメ サントラ選
2008 TV アニメ サントラ選
2007 TV アニメ サントラ選
2006 TV アニメ サントラ選
2005 TV アニメ サントラ選
2004 TV アニメ サントラ選
2003 TV アニメ サントラ選
2002 TV アニメ サントラ選
2001 TV アニメ サントラ選
2000 TV アニメ サントラ選
1999 TV アニメ サントラ選