<最初に>
アニメ作品がたくさん出てきますが、最近のアニメ音楽で特徴的なものとなるとなかなか出てきませんね。
過去の作品で定評のある人がやはり出てきますが、昨年同様別のジャンルの音楽を作ってきた人が
結構味のある音楽を作っていて、なかなかおもしろい感じの曲を提供している感じです。
そちらの話も、順次していきたいのですが…
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取り上げるサントラは、
風の谷のナウシカ イメージアルバム (32ATC-103)
風の谷のナウシカ サントラ盤 (35ATC-3)
シンフォニー 風の谷のナウシカ (35ATC-2)
(いずれも 徳間ジャパンコミュニケーションズ)
サントラを買い続けるきっかけになったのが、このアルバム群。シンフォニー 風の谷のナウシカのTrack5
メーヴェを
(かなり懐かしいFM番組ですが)サントリーサウンドマーケットで聞いたのが、実はその始まりなんです。
風の谷のナウシカという作品は、劇場用アニメーションの公開形式や販売の仕方でエポックメイキングであるわけでして、
結構語るべき内容が豊富な作品です。そのあたりは別の場でします。
今でもアニメ映画の場合、あらかじめ作品のイメージを作る前に作曲家に依頼して作成・発表することが多いようです。
風の谷のナウシカもそういった形でイメージアルバムを作ったのですが、どうもレコード会社などの目論見では、
映画のサントラは別の作曲家に依頼する予定だったようです。ところが、監督の宮崎さんやプロデューサーの高畠さんの頭には
そのイメージアルバムの音楽が鳴り響いてしまって、久石さんがナウシカのサントラを担当することになったということのようです。
イメージアルバムは、シンセサイザーでの曲が中心で荒々しく猛々しい部分を強くした感じのものやいかにも中東方面を
イメージできるような音源を利用した曲で、荒削りながら原作であるコミックスの(それまで連載していた部分までの)
イメージをしっかりと含んだものとなりました。
サントラの方は、映画を見ていただければ分かるように、イメージアルバムにシンフォニーの味付けをつけたような絶妙のバランスで、
場面がイメージできるような曲が作られています。
シンフォニー版は、伸びやかに飛翔していくような弦楽器を中心とした曲が多く、イメージアルバムに多様な表情をつけた形になっております。
そういえば、せっかくイメージガールを設定し主題歌を歌わせているんですが、
その曲をエンディングで使われなかったのは、推して知るべしというところでしょうか。
久石さんとしては、ナウシカのイメージアルバムに携わっていた頃はどちらかというとサウンドにこだわっていて、
特徴であったエスニックな要素を生かしてリズムもハードにしてという意識で作っていたと、著書(I
am 遙かなる音楽の道へ メディアファクトリー)で
述べています。それでも、十分メロディアスな部分があることは、聞いていただけるを
分かるかと思います。
このナウシカのサントラは、通常のアニメサントラの売り上げのようにある一定数売れるといったものにはならず、
発売後半年以上チャート内にいずれかがランクインしていたということからも、
サントラとして飛び抜けたクオリティーとアニメファン以外への訴求力を持った楽曲であったようです。
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紹介するサントラは、
藍より青し 藍青音盤一 桜
(パイオニアLDC PICA-1249)
サントラとしてのテーマを統一していくという作業は、どんな作品でも何らかの形で存在するわけですが、それには
1 作品全体の世界観をメインテーマ(主題歌も含む)によって形作り、そのアレンジバージョンを中心に場面ごとの曲を作る
2 曲調を統一して、各場面にあわせた曲を個別に作っていく
3 キャラクターと場面を組み合わせた曲を作っていき、さらに作品として必要な場面の曲を作っていく
といった形になっていくのでしょう。(かなり、荒っぽい区別ではありますが)
1は、劇判などインストゥルメントを中心としてつくられている方では一般的な手法でしょう。
2は、制作側から要求して作られていく場合と、作曲者の得意としているジャンルを強調して作られるため、
荒削りながら最近はいくつかとられている特異な手法でしょう。
3は、キャラクターソングとリンクして行われることが多く、1990年代から多く作られている手法といえるでしょう。
増田さんの場合は、どちらかというとキャラクターを中心に場面の曲を構成するというものですが、
メインキャラの心情表現を中心とした場面ごとの曲というものが結果として一つのサントラとしてのテーマを形成している点もあるという、
ちょっと複雑なスタンスだったりします。
田中公平さんもこれに近い印象がありますが、場面表現の曲とキャラ表現の曲は結構明確に違っている点で、やはりスタンスの違いがあるようです。
この藍より青しでは、葵という時代錯誤ともいえる古風な女性キャラをメインに立てておりまして、
他のキャラを立てるような形でありながら、ベースとなる世界観の中心をこのキャラに求めなきゃならないというやっかいな設定だったりするんです。
このため、日常の場面表現のほとんどを葵というキャラクターをあわせることで作られているような感じです。
曲についての印象ですが、他のキャラクターの主題の曲はだぁ!だぁ!だぁ!やまほろまてぃっくなどでこれまで聞いてきたものに近く、
リズミカルでキャラクターの登場を印象づける分かりやすい音楽という感じでした。場面を表現する音楽の多くは落ち着いた
多少ゆったりとしたリズムで、かつ高め音域を音楽の出だしの主旋律として使われていて、
これが結果として作品及びメインキャラである葵がベースとして持つ落ち着いた印象をうまく演出しているようです。
ゆったりとしたリズムで日常の場面を表現する音楽というのは、ここ最近振り返ってみるとほとんどなかったような気がします。
そういう意味で、私としてはサントラとして気にかかるものだったりします。
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紹介するサントラは、
宇宙海賊ミトの大冒険 オリジナルサウンドトラック(meldac MECB28106)
宇宙海賊ミトの大冒険 2人の女王様 サウンドトラック(AYERS AYCM-673)
このサントラを聴いて最近の七瀬さんのサントラを聴くと、基本的な劇判としてのスタンスは変わっていないということをあらためて感じますね。
オーソドックスなストリングスを中心とした曲は、落ち着いて場面に集中できる劇判に徹していつつ、
単独の曲としてもメインテーマの旋律をふまえてアルバムとして聴かせてくれているんですよ。
でも、どっちかというと危機感があったり緊張感がある場面やドタバタした場面が多かった作品のようですが…
そうはいっても、きちんとシリアスな場面もありましたから、落ち着いた曲調という属性は生かされているんですよ。
そうはいっても、劇判として使いやすい曲というのは、このサントラではドタバタした場面での曲だったりするんですね。
落ち着いた場面の曲がしっとりと聴かせてくれればくれるほど、ドタバタした感じの曲はよりいっそう引き立つというものなんでしょう。
その勢いというのが、オープニングテーマの曲にも引き継がれているため、たぶんそのアレンジバージョンの曲が一番使われているということになっているようです。
ただ、このころはサントラに収録されている曲が、それぞれ旋律をもっていたような感じで、
キャラクターないし場面によるテーマのようなものがオープニングテーマの曲くらいしかなかったのです。
そのため、いろんなこれまでの(いろいろな作曲家による)サントラの曲調を寄せ集めたような印象が感じられた点もあるんです。
そういう意味では、まだ七瀬さんらしい曲調というのは見えづらかったサントラでもあったんです。
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紹介するサントラは、
あずまんが大王 オリジナルサウンドトラックVol.1(Lantis LACA-5111)
リコーダーと弦楽器を中心とした音楽というのは、それだけでバリエーションがたくさんある楽しい音楽になるものですが、
劇判として使われるとそれはもう強力な引き込む力を持つ曲となってくるようです。
なにせ、シンプルな旋律を気持ちよく並べているのですから。
あずまんが大王は、ギャグもののジャンルに当たるものですから「間」というのが重要な演出上の手法になります。
映像的に間を作り出すだけでなく、音も止めてしまうという手法をGS美神で行っていきましたが、
それではうまく表現できそうもないと思っていたんです。
ずまんが特有の間を作り出すために、リズムパターン中心で音の空間を広くとっている楽曲が、
これまたうまくはまっているんですね。
さらに、栗原さん率いる栗コーダーポップスオーケストラの普通の楽曲が、妙に画面にはまっていくんですね。
今回の音楽を作る作業が楽しくて仕方ないとライナーノーツに書いているくらいですから、
この楽曲がはまらないはずがないと言っていいでしょう。
それにしても、新学期というタイトルで6つもバージョンを作っているんですが、
楽器の数はそれほど変えていないのにこれだけ違って聞こえてくるというんですから、音楽というのは奥が深いなぁ…と感じつつ、
あずまんが大王の底知れない妙な「間」の世界にも引きずり込まれていってしまうような音楽だったりします。
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紹介するサントラは、
ちょびっツ オリジナルサウンドトラック001 (ビクターエンタテインメント VICL-60886)
元ピチカート・ファイブの といった方が高浪さんについては分かりやすいかもしれませんね。
往年の曲調が再現されているという感じの曲という風にいうと、今回のサントラの曲としてはしっくりいくかもしれません。
普通、パソコンが出てくる話というのなら打ち込み系の曲を選択しそうなものですが、たいがいの場合人とパソコンとの関係を提示する作品のほとんどは、
アコースティックな曲を選択していまして、そういう意味では順当な選択ともいえます。
1970年代の音楽というのは、旋律や編曲のクオリティーが高いため、今でも古びることなく聞かれる曲が多いのではないでしょうか。
それは、一般ウケするものもあるのですが、音楽好きにも好かれる要素が盛り込まれているということにもなるんでしょう。
そういった意味で、現在のサントラのトレンドとしてはかなりかけ離れた、ソフトロックとよばれていポップな音楽がこのサントラでは聞くことができます。
このため、場面を表現する曲というもので構成されていて、キャラクターをイメージした曲というものは、このサントラではあまり感じられなかったという印象があります。
強いていうと本須和くんとちぃちゃんをはじめとした人とパソコンとの関係をイメージしていると言っていいでしょうか。
それは、やはりアコースティックな音楽が似合っているように感じます。
そうはいっても、最近のトレンド(というよりビクターエンタテイメントのアニメサントラだけかもしれませんが)ともいえる、
コーラスやハミングなどの人の声が入っている劇判音楽でもあります。
また、初回特典がレコードジャケット風仕様ということで、徹底してアナログ感にこだわっているサントラといえるでしょう。
紹介するサントラは、
.hack//SIGN ORIGINAL SOUND & SONG TRACK 1(ビクターエンタテインメント VICL-60905)
放送開始当初は音楽と映像のバランスとしてどうかなぁ…と思っていたのですが、ある程度経ってしっくりとくるようになった感じです。
ほんの少しですが感じられた違和感というのが、そもそも.hack//SIGNが表現している世界自体の「徹底した仮想世界」だったということを私が気づくまで、
結局3話ほどかかってしまいましたが。ブックレットにある梶浦さんのインタビューの中にも「1mmの違和感」というキーワードとして語られていました。
シンプルな旋律のもつどこか切ない印象を、複数の音が重ね合わせることによっていろんな表情を場面にもたらすという梶浦さんらしい曲調は、
今回も生き生きと紡ぎ出されていると言っていいでしょう。劇判にありがちな「声」を「楽器」に近づけることなく、
聴く人にその歌詞の意味まで興味を持たせるような曲作りは、他の劇判と一線を画していると言っていいかと思います。
映画やアニメなどの映像に付けるカスタムメイドの劇判というより、しっかりとした楽曲という感じが、
Noirにしろ.hack//SIGNにしろ同じように受けた印象ですが、どうもこれは発注側である真下監督自身が望んで作らせているということのようです。
おかげで、アレンジ曲が多くなりがちなサントラがほとんどの状況で、アルバムといってもいいサントラに仕上がったということになるのでしょう。
逆に、これほど曲作りの側の自由度が多いということは、作曲家泣かせともいえるなぁ…と思ったら、やっぱりインタビューで梶浦さんも述べていました。
こういったサントラというのは、私が通常取り上げるサントラのような汎用性がどうしても薄れてしまうのですが…
Noirの例もあるから、使われてしまうんじゃないかという「期待」をちょっと持っていたりします。
音楽プロデューサーの野崎圭一さんが惚れ込んで作っているんだなぁ…と感じるようなコメントに、
曲ごとの初出シーンと解説と梶浦さんのインタビューの入ったブックレットだけでも(個人的には)楽しめましたが、インスト系のアルバムとしても楽しめると思いますよ。
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紹介するサントラは、
ココロ図書館 オリジナル・サウンドトラック (ビクターエンタテインメント VICL-60819)
かわいらしい姉妹が、人がほとんど訪れない図書館の司書としての日常やそこにある本の中の世界を落ち着いたタッチで描いた「ココロ図書館」。
かわいらしい主人公たちの絵的な印象とは違ってキャラクター萌えするような話は全くなく、落ち着いた日常にちょっとした嬉しくもあり・ちょっとさみしくもある出来事を淡々と描いた、
最近のアニメではちょっと風変わりな作品でした。
ピアノ・オルガン・アコースティックギター・リコーダーなどが主旋律を奏で、それらにストリングスがアレンジとして織り込まれていくという
室内楽のような曲は、やはり派手さがなくて聞き過ごしそうになってしまいます。そういった曲というのは、作曲者や作品をどうしても選ばないと使えないのですが…
アニメのサントラとしては、なかなかいい感じの巡り合わせにはならないようです。
保刈さんは、確かアニメサントラはこの前に1作程度つくられているはずです。今回のものも1つの曲自体結構長目に作ってあって、
あまり劇判としての曲の作られ方をしていないようです。むしろ、ニューエイジミュージックのアルバムとしての曲といった風にサントラアルバムが作られていますし、
作品での利用も曲のほとんどを流しているような感じでした。
どうも、ある一つのストーリーごとに曲を作っているというもののようで、劇判にありがちな細切れな曲調の変化はなく、
保刈さんの曲のオリジナリティーを十分織り込んだ曲になっているようです。このため、主題歌のアレンジバージョンがいくつかある程度で、
メインテーマとなって劇判が作られるという形態にはなっていないようです。
「ほんのちょっとの出来事」に感動できるような余裕を思い出させてくれるような、日常のどこにでもある光景にスポットを当てているような、
そんな室内楽としても良質な曲がつまっているのが、ココロ図書館のサントラと言うところでしょうか。
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今回紹介するのは、
円盤皇女ワるきゅーレ オリジナル・サウンドトラック (日本コロンビア COCX-31912)
個人的には、絵的な部分でちょっと引いてしまいましたが、ストーリー構成やキャラクターの立て方でそれなりにおもしろく見ることができたのが、
円盤皇女ワるきゅーレという作品です。まあ、宇宙船がよく落ちる街だこと…そんな非日常にのどかな日常が占めていくということで、
違和感もなんとなく薄まってしまっているところがすごいというのか…
まあ、こういった非日常があって日常描写を中心とした作品というのは、これまでの川井さんの作品を知っている方にとっては
「来るものがあるかも…」と思うでしょうね。その通り、シリアスとギャグの絶妙のバランスで成り立っている曲たちが作られていましたね。
曲個別の説明は川井さん自身がブックレットに書いてありますからコメントの必要もないですし、音響監督の亀山俊樹さんが
「曲主体が主張するというより、映像をつけられることを前提として上で、すばらしい曲になっている。」というコメントをつけているくらいですからね。
最近のサントラの仕事としては、結構評価できるのではないかと思います。
特筆すべきは、やっぱりワーグナー作曲「ワルキューレの騎行」のアレンジバージョンが3つありまして、しっかり楽しんでいますね。
お茶碗だたきバージョンなるものもありますし。
こんなものも作っております
2012 TV アニメ サントラ選
2011 TV アニメ サントラ選
2010 TV アニメ サントラ選
2009 TV アニメ サントラ選
2008 TV アニメ サントラ選
2007 TV アニメ サントラ選
2006 TV アニメ サントラ選
2005 TV アニメ サントラ選
2004 TV アニメ サントラ選
2003 TV アニメ サントラ選
2002 TV アニメ サントラ選
2001 TV アニメ サントラ選
2000 TV アニメ サントラ選
1999 TV アニメ サントラ選